本音
少し大きなスーパーの中の三階にあるタリーズカフェにいる。
なぜかスズメが迷い込んでいる。
ヒヨ、と鳴いている。
このまま黙ってしまうとずっと黙ってしまうから書く。
毎日色々ありすぎて全然書くことが追いつかないし、これ書いてどうなの?とも思ってるし、何より自分を誤魔化さずに見たら、現状の自分があんまりで撃沈していた(底のさらに底)。
ワタシ、ナニヒトツ、マンゾクシテナイ。
ワタシ、ナニヒトツ、ユメヲカナエテナイ。
いえ、叶えてるんです。実は。
すべて叶ってる。
でも、ほんとうののぞみを叶えてないことにもう誤魔化せない、嘘つけないとこにきてる。
わたしのほんとうののぞみ。
それをやらなければ、なんのために生まれてきたのかわからない!!!
わたしのほんとうののぞみ。
たくさん旅をすること。
お金がたくさんあって不自由がないこと。
絵をまた描くこと。
人に触ること。
そしてなにより、
物書きになることと、愛し愛されて生きること。
ついに書いてしまった。
ついに言ってしまった。
この二つを言うことがいちばん怖かった。
だってずっと昔からの本当の望みだから。
今書いててもガクブルだしザワザワする、だから今まで誰にも言わなかった。今初めて言う。子供の頃から本を読むことと文を書くことが好きで好きで、物書きになりたかったし、よく書いていた。
大好きな作家さんの作品を読んでは感動し、憧れ、ため息をつき、この人がいるなら私は書かなくていいや、とか、才能のある友だちを見ては、私はそもそも物書きになりたくなかったとか自分を騙して、なんどもなんども諦めようとした。
そしてその望みごと頭の中から消し去っていた。
でも、無理だった。
思い出してしまった。
そう。私は物書きになりたいんだ。
そして愛し愛されて人と生きたい。
思いきり自分を楽しみたい。
わたしは思いきり遊びたい。
生きてることを遊びたい。
この世界と宇宙とダンスしたい。
踊りたい踊りたい踊りたい!
自由に遊んで踊りたい。
全てここにあるのだから、あらわしたい。
いつのまにか閉じかけたこの線を開いて遊びたい。
わたしはずっと一緒に遊んでくれる人をさがしてた。
一緒に踊ってくれる人をさがしてた。
淋しかった、苦しかった。
ちがう、わたしはわたしと踊る、わたしと遊ぶんだ。
それだった。
スズメがヒヨと鳴いている。
かわいいな・・・。
まわりに夢を叶えていない人がいないことに今朝気付いた。
あれ?夢を叶えていない人が一人もいない!夢って叶うんだ!って気付いた。
なぜか夢は叶わないと思い込んでいた。
今朝まで。
あ、叶うんだ!と気付いた。
夢は叶う。
本当に強く願えば叶う。
振り返るとわたしの人生、願った夢はすべて叶ってる。
叶ってないのは、わたしが目を背けたもの。
叶わないのが怖くて怖くて、なかった事にしたもの、ほんとうの願い。
それが、『物書きになることと、愛し愛されて生きること。』
もう目を背けない。
思い出したのだから。
それを願ったのは私自身。
はっきり言ってめちゃくちゃ怖いし、今の自分が程遠くて泣くほど情けない。
でもいい、わたしはやる。なれるかどうかわからないとか、傷付きたくないとか、ダサいとか恥ずかしいとか、もうそんなこと言って死んでいくのはいやだ。
ウジウジしたまま死んでくのはいやだ。
他人になんと言われてもいい、どう思われてもいい、なんのために生まれてきたかわからないままじゃ、死ぬときにわたしに顔向けできない。
このままじゃ死ねない。
さっきエスカレーターを登り本屋についた途端、心屋仁之助さんの「好きなことだけして生きていく」という本と目があって、パラパラめくって、これ買おうと思った。
わたしは今まで、そういう系の本を読む自分を肯定出来なかった。
恥ずかしい、ダサい、かっこわるい、そう思っていた。
本当はそうなりたいのに、そうじゃない自分を見たくない上に羨んで妬んで否定することで自分を守ろうとした。
そんなことして守った自分を好きになれるわけなんかないのに。
ほんとうはわかっていたけど、守っていたかったのもほんとう。
それだけたくさんたくさん傷付いてきたんだ。
それがわかった、それを泣きながら、グジュグジュした傷のかさぶたを引っぺがして真っ赤な血が吹き出てるのをちゃんと見て、血を吹き出しながら泣いた。鼻水を垂らしてゴロゴロ転がりながら獣みたいに吐くほど泣いた。
だから、もう、大丈夫。
雑誌コーナーで、今や国民的大スターの人のエッセイを立ち読みした。
昔まだ彼が無名だった頃にやりとりしたことがあった。
今日もすごくいい文章だった。
素直で、まっすぐで。
雑誌を置いて、レジに行く。
このダサい自分をそのままで「好きなことだけして生きていく」をカウンターに出す。
若いお姉さんが事務的に金額を告げる。
多分向こうは何も思ってないだろうに、わたしの頭の中で勝手に、「この人、こんな本買って、好きなことだけして生きていくなんてバカじゃない?いい歳してんのに・・・ダサ。イタいわ〜」って思われてるんじゃないかと情けなくて顎がグッとなってしまう。
情けなくて涙が出そうになる。
そう思ってるのはレジのお姉さんじゃなくて、私自身だってこと、よーく知ってる。
一人勝手に居たたまれなさと情けなさで泣きそうになりながらお店を出ようとしたときに、ふと、がんばれ!と声が聞こえた気がした。
それは遠い昔に、今はもう無い雑誌に初めて詩の投稿をして、初めて賞をいただいてそれが活字になり紙面に載ったとき、嬉しくて嬉しくて当時友だちだった人たちみんなにメールしたときに、唯一返信をくれた人の言葉だった。
メールは短い文章だったけど、それはちゃんと私のこころにまっすぐに届いた。その温度まで。それはとても、熱かった。
その唯一返事をくれた人が、さっき書いた、今や国民的大スターの人だった。
彼は、他人の夢を、ぜったいにぜったいに馬鹿にしなかった。
どんなささいなことも、最大の熱量で喜んで応援してくれた。
彼はもうそんなことを忘れているだろうけど、私はそれを、死ぬまで忘れない。
「おめでとう!がんばれ!」
うん、わたし、がんばるよ。
いつかそのもらったバトンを、わたしも誰かに渡せるように。
よーし、ドキドキするなぁ。
誰にも知らせずひとりひっそり書いているこのブログに決意を書いただけでこんなにドキドキして逃げたくなるなんて。
怖い怖い怖い。
めちゃくちゃ怖い。
でももう決めたんだ。
その斜め上ではわたしがあっけらかんとあははーと笑って、大丈夫大丈夫、と言ってるような気もする。
スズメはいつのまにかいなくなった。
外に出れたのかな。
ほどなくして、網を持った警備員が二人やってきたけれど、しばらく立ち尽くして、そのまま帰っていった。